シリーズ6回目となる今回は、“受動態”について。
“~される”や“~された”と表現したい時に使う文法で、生徒たちにとっても、そこまで“難しい”と感じる文法ではないはずです。
ただし、それは“表面的な部分の理解なら”という条件付き。
本来のあるべき“文法を学ぶ意味”を見失った学習の仕方をすれば、理解したつもりが“勘違い”へと早変わり。
今回は、そんな意外と危険な“受動態の使い方”について、お話します。
受動態の“基本”
まずは受動態について、以下の基本的な説明に目を通してください。
「“AがBを~する”という、動作を“する側”を主語とした文を能動態と言います」
「一方、“BがAに~される”という、動作を“される側(能動態の文における目的語)”を主語にした文を受動態と言います」
「そして、主語の後を“be動詞+過去分詞”の形にすることで、受動態になります」
これが基本的な“受動態”の説明です。
ここまでの理解は“大丈夫なはず”。
受動態という文法の厄介なところは、“ここからです”。
日本語に“引きずられない”
例えば、“彼女は財布を盗まれた”という文を英語にする場合。
文末が“~された”だから、“受動態だ!”と思った方。
残念ながら、日本語に“引きずられすぎです”。
その結果、こんな英文を書いてしまうことになります。
She was stolen her wallet.
” 彼女は、彼女の財布を盗まれた”と書くことで、一見すると“何の間違いもない”ように感じます。
ですが、受動態の“基本”を思い出してください。
能動態の文で“目的語”だったものが“主語”になった文。
これが受動態でした。
ということは、受動態の文は、もとの能動態に戻しても“違和感がない”ものでないといけない。
ところが、今回の文は“もとに戻す”と、こんな形になってしまいます。
Someone stole her her wallet.(“誰かに盗まれた”と仮定して、主語が“Someone”になっています)
受動態の文で主語になっていた“She”を目的語の位置にもっていくと、“her”になります。
すると、“彼女の財布”のherと重なり、herが2つ続くという、なんとも“違和感ありまくり”の間違った文になることが分かります。
これが“~された”という日本語に引きずられてはいけないという“理由”です。
なぜ、こうなってしまうのか
答えは簡単。
実際に使う場面を“想定した学習”が出来ていないからです。
では、実際に受動態を必要とするのは、“どんな場面なのか”
その一例をお見せします。
例えば、誰かに自分のカバンが盗まれたとします。
この場合、盗んだ犯人が誰かは分かっていないので、“犯人”を主語にすると、“誰かが私のカバンを盗んだ”という分かりづらい表現になります。
だったら、“My bag was stolen.”という受動態の文にして、“カバンを盗まれた”とした方が“伝わりやすい”。
つまり“~される”や“~された”という日本語があったから“受動態にする”という考え方ではなく、その方が相手に伝わりやすいから“受動態を使う”。
この考え方が間違った英文を作り出さないためには、必要になります。
結論
“使える英語”と言っても、結局は“問題”という“ボール”を投げてもらわないと動き出せないようでは“マズイ”。
“授業で英語を使ったディベートがあるから”。
“試験で書く力や話す力が試されているから”。
こういった“理由”がなくても、“自力で英語を使う場面を想定する力”を身に付ける。
“使える英語力”を目指す”のであれば、“この力は必須”ではないかと思います。
“表現法を増やす”のが目的であって、“書き換え”をマスターするのが目的ではない。
受動態のような文法を学習するときは、特に“この意識”を忘れないように、心がけてください。
(受動態の授業で書くホワイトボードです)