前回の記事(地理・歴史の学習(シリーズ①))の最後に、次回は“他教科の土台となる地理”という内容の記事を書かせていただくことを予告していました。
ただ、他教科といっても、同じ社会の“歴史について”です。
昨今、歴史は“暗記教科ではない”とよく言われます。
かといって歴史の“流れ”を意識していれば良いというような、単純な話でもありません。
暗記に頼らない学習のために“必要なこととは何か”。
それを考えることから、“地理という教科が持つ影響力の大きさ”を見ていこうというのが、今日のお話です。
“流れ”にこだわる前に、注意すること
“前後の流れや背景を押さえていれば、丸暗記に頼る必要はない”。
確かにその通りです。
でも、この考え方には“一つ落とし穴があるんです”。
それが、前後の流れや背景を押さえた説明を“分かりやすいと思える土台があるのかどうか”ということなのです。
具体例を挙げてみます
日露戦争が始まる少し前、1902年に締結された“日英同盟”について。
遠く離れた日本とイギリスが“なぜ、同盟を結ぶことになったのか”。
まずは、その説明となる以下の文に目を通してください。
「当時、日本もイギリスもそれぞれ違う理由で“ロシアと対立しているという事情がありました”」。
「日本は満州と朝鮮半島を北から狙うロシアと対立が激しくなっており、その様子を見ていたイギリスも、他国を侵略して領土を拡大しつつあるロシアに強い警戒心を持っていました」。
つまり、日本とイギリスの両国にとって、ロシアが“ネックとなっていたわけです”。
このような利害関係の一致から、日本とイギリスは同盟を結ぶに至りました。
どうでしょうか。
単なる知識の暗記ではなく、背景にある“流れ”を押さえている点からも、申し分のない説明のように思います。
でも、とても丁寧に思えるこの説明でも、“ポカンとした表情の生徒が一定数いるのが事実です”。
これは、なぜでしょうか?
“押してダメなら、引いてみる”の発想
目の前の内容をなかなか生徒が理解出来ないとき、その原因は“説明した内容以外のところにあることが多い”。
今回の例で言えば、まず大前提として“説明中に出てきた各国がどこに位置しているのかを、知っておく必要があります。
“ロシア、イギリス、朝鮮半島、満州”。
これらがどこにあるのか。
地理的に把握していない状態では、“どれほど説明内容を噛み砕いても、ピンとこないのは当たり前なんです”。
それぞれの位置関係を知っていて、はじめて各国の“思惑”が分かってくるのですから。
教える立場になってこうした瞬間を経験するたび、地理という教科の影響力の大きさを痛感させられます。
結論
“なぜと流れ”が分かれば、歴史は暗記に頼らなくてもいい教科。
確かにそう考えることも出来ますが、こちらが分かりやすいと思っている”流れ”が、生徒たちにとっては大して“分かりやすいものではない”ということは、往々にしてあります。
その原因は、それを理解する(言い換えれば、分かりやすいと感じられる)だけの“土台がないから”。
今回は歴史の学習を一例にした話でしたが、“地理で得た知識が学習の土台となっていることは非常に多い”。
目先の学習に行き詰まった時、原因を探るときの参考になればと思います。